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此処は、主人公至上主義の二次創作サイトです。 現ジャンル:「狼陛下の花嫁」 : (管理人の嗜好の赴くまま萬ジャンルで、駄文を書き連ねるためのサイトです。恋情友愛関係なく、主人公は総愛されが基本。時々捏造設定が付加されることも有ります。) 読了後の苦情批判は受け付けません。お好みにそぐわない場合は速やかにお帰りになって、このサイトの存在ごとお忘れください。
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2024/05/04 (Sat)




*思いつき小話。
*陛下視点。


陛下は黒いです。(狼でも子犬でもお腹の中は真っ黒です)

*時間軸は曖昧です。
*唐突に始まって唐突に終わるほぼ会話の小ネタです。
*季節も時期も外れるには程がある(しかも年単位で)流星群ネタを使ってます。


以上を踏まえてご覧下さい
読了後の苦情批判は受け付けません。



『絶対運命』(管理人:水綾紅蓮)からお借りした『日常非日常?10題より 
http://www.geocities.jp/miayano/odai.html )



10、「流れ星に祈る」





 

 

 




「さて夕鈴。今日は何する?」


 

夕鈴曰く、子犬のような、と形容される穏やかな微笑で黎翔は「臨時花嫁」に笑いかけた。
煩わしい縁談避けの為に雇い入れた偽の妃との、夫婦の時間。大抵お茶を飲みながらお喋りをしたり、卓上遊戯で時間を潰すのが常だった。だから今日もそうやって過ごす積りで、黎翔が夕鈴に希望を尋ねる。

 


「あの、陛下・・・えと」


 

いつもなら勝気に笑いながら好きな遊戯を選んで「今日こそ勝ちますよ!」と挑んでくる夕鈴が、もじもじと視線を彷徨わせながら黎翔を伺う。朗らかではきはきした夕鈴が、言葉を濁す事など珍しく、黎翔は首を傾げた。


 

「どうしたの、夕鈴?あ、今ある遊戯は飽きちゃった?なら、何か新しい種類のものを用意させようか?」


「いえ!違います!・・えと、そうじゃなくて、あの、今日も、お忙しかった、ですか?」


「んん?まあ、確かに暇ではなかったけど、・・」


「やっぱり、お疲れですよね・・・」

 


僅かに頬を薄紅に染めて上目遣いの夕鈴が、黎翔に尋ねる。その可愛らしい表情に鼓動を僅かに速めながら、黎翔は笑って否定する。実際は「暇ではない」所か、今日も休憩時間すらまともに取れないくらいの激務であったが、そんなことは億尾にも出さない。どれ程疲労が溜まっていようと、夕鈴の笑顔を見ればそんな疲れなど吹き飛ぶからだ。

 


「そんな事無いよー。今日も他愛の無い事務仕事ばっかだったし。どうしたの?何かやりたい事があるんなら、今日はそれにしようよ!」


 

黎翔は殊更朗らかに笑って見せて夕鈴に先を促す。
自立心旺盛で自制に富んだ夕鈴は、滅多に己の希望など聞かせてくれない。だから珍しく何か言いたそうな彼女の希望を聞きだしたくて、「子犬」のような表情を前面に押し出す。夕鈴が、黎翔の「子犬」のような穏やかな面に弱いことは熟知している。



 

「えと、あの・・・・実は、今日老師に、流れ星が沢山見れる日だと伺いまして・・・」


「ああ!流星群ね!確かに今日だったかな。」


「それで、宜しければ、陛下も、・・えと、一緒に見れたら、な、と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「ふわ~、流石、綺麗ですねー」

「そうだねぇ」


にこにこと愛想を振り撒く子犬陛下と、きらきらと瞳を輝かせる兎嫁が、後宮の中庭で肩を並べて星空を仰ぐ。

 


「さて、じゃあ、今のうちに願い事を決めておきましょう、陛下!」


「願い事?」

 


一緒に星を眺める振りで、楽しそうに空を見つめる夕鈴の横顔を見つめていた黎翔は、唐突な言葉に一つ瞬きをする。

 


「そうです!折角沢山流れ星が見れるんですよ!いつもならとても三回も願い事を呟く暇なんかありませんけど、今日なら大丈夫だと思うんです!」


「ははは、」

 


一生懸命に訴える夕鈴の真剣な瞳に笑いがこみ上げる。
「流れ星に向かって願い事を三回唱える」というおまじないは知っていたが、まさか自分が実行する事になるとは。

 

(星に、願いを、ねぇ)


「笑ってないで早く考えてくださいよ!」


「そういう夕鈴は?」

 



一生懸命な夕鈴は可愛らしいが、特に星にお願いしたい内容など思いつかなかった黎翔は反対に問いかける。普段全く甘えてきてくれない夕鈴の望みを、他愛ない事であっても知れるかも、という期待もあった。

 



「私ですかー。そうですね、えーと、・・・「無病息災!」あ、やっぱり「家内安全」!、・・・いえ、「大願成就」が一番無難ですかね?「無病息災」も「家内安全」も兼ねられますし。」



「あははははははは!」


「ちょ、なんでそんな笑うんですか?!陛下!」


「だ、だって、ゆーりん・・・・なんでそんな、神像への祈願じゃあるまいし・・・ふっ、ふふふ」

 


どきどきわくわくと夕鈴の言葉を待っていた黎翔だが、夕鈴が考え込むように俯き、晴れやかな表情で顔を上げて宣言した願い事の内容に腹を抱えて笑い転げた。やっぱり夕鈴は面白い、と思いながら頬を赤く染める姿を見つめる。

 



「やー、うん。でも確かに大願成就は良いんじゃないかな。ふ、ふふ・・・言いやすくて三回唱えるのも楽そうだし」


「・・・思い切り笑い堪えた顔で言わないでくださいよ!」


「ごめんごめん。」


「もう!・・・そういう陛下は願い事決まったんですか?」


「あーと、・・そうだねぇ」

 


拗ねた顔から一転、期待に満ちた瞳を向けられる。そんな表情も可愛いな、と満足しながら少しだけ考え込む振りをする黎翔。

 


「・・・・んー、・・・まあ、「天下泰平」辺りでどうかなー?」

 

夕鈴の楽しそうな表情を曇らせたくなくて適当な願い事を口にする。
祭事や神事の必要性は理解できるが、個人的には神頼み、などという他力本願な考え方を厭っていることなど億尾にも出さない。
 

・・・つもりだったが

 


「はぁ~~~」

 


そこで行き成り夕鈴が深い溜息を吐いた。

 


「夕鈴?」

 


しまった、神頼みやおまじないなど下らない、と思ってしまった本音がばれたか、と狼狽しながら穏やかさを保って首を傾げてみる。

だが夕鈴の返答は黎翔の予想を常に外してくれる。

 


「陛下って、無欲ですね~。」


「え?」

 


今回も、全く思っても見なかった言葉を告げられて、黎翔の目が点になる。

 



「だって、それって「白陽国の国王陛下」の願い事じゃないですか。つまり、国の為で、国民みんなの為の願い事ってことですよ。」


「そう、かな?」

 


そんな黎翔に、力強く夕鈴が語る。

 


「もー、陛下はいつもいつも国の為に働いて下さってるんですから、お仕事が終わった後の夜くらい違う事考えましょうよ! 流れ星にお願いする内容が国の為のものだなんて駄目駄目です!お休み時間位自分の為に使うべきです」
 

「使ってるよ?」



戸惑いつつも、段々と口元が綻ぶ黎翔。

 


「全然足りませんよ!「天下泰平」って、確かに大事な事ですが、あくまでそれは国全体で叶えるべき願い事です。 つまり、「珀黎翔さま」個人の願い事じゃないじゃないですか!


 駄目ですよ、強欲は身を滅ぼしますけど、無欲すぎると折角のチャンスも逃がしちゃいます! いつどんなチャンスが巡ってくるかわからないんですから、いつでも手を伸ばす準備はしとかないと!!
 

 さ、というわけで、「珀黎翔様」個人のお願い事考えましょう!」



「ははは」

 



湧き上がる笑みが抑えられない。
国の頂点に位置し、全てを手に入れることが出来る筈の最高権力者に向かって無欲とは。しかも、誰もが完全無欠の「狼陛下」と仰ぎ、国を導くのは国王の役目だと誰もが思っている中で、「天下泰平」を叶えるのは、国全体の・・・皆でやるべき事なのだから一人で背負うなと言うのか。

 


「ははははは!凄いな夕鈴。」


 

こんな風に、何気ない言葉で、いつでも黎翔の心を救い上げてくれる。

 

 


「笑い事じゃないです!陛下はいつもいつも頑張りすぎです。こんな時くらい、自分の為の願い事しとかないと!ほら、あんなに一杯星が流れてるんですよ。早くお祈りしましょう!

大丈夫です、星が叶えてくれなくても、私にできることなら手伝いますし!」

 


誰にも足元を掬われることの無いように、誰にも侮られる事の無いように、いつでも完璧な王としての能力を示してきた。畏怖と恐怖を綯い交ぜにした感情であっても、王宮の誰もが有能な王と讃え、恐れ、疎んじる。


そんな黎翔に、当たり前に助け手を差し伸べるのは夕鈴だけだ。
何でも出来るのだから必要ないだろうと考えたりはせずに、何でも出来ても一人では大変でしょう、と言ってくれる夕鈴だから、傍に居て欲しいと思うのだ。

 

 

「ははは、そうだね。・・うん、じゃあ、お願いしようかなぁ」


「その意気ですよ!」


「うん、・・・もし大変そうなら、手伝ってくれるんだよね?」


「勿論です!私は、陛下の味方です、って言ったでしょう?」

 


夕鈴が、最初にくれた優しい約束。


王宮には本当の絆などないのだといった黎翔に、自分は臨時の花嫁だけどと言いながら、一生懸命に元気付けようとしてくれた。何処までも慈しみしか感じられない澄んだ瞳で見つめながら、花が綻ぶように優しく笑ってくれた表情が心を揺さぶった。
 

・・・李順と黎翔の密談を聞いて、自分は囮として利用されたのだと、傷ついて怒っていたはずなのに、敵に決して屈しなかった。扉越しに聞こえた声は、泣きそうに震えていたのに、剣を突きつけられて殺されそうになったのに、秘密を守り通して見せた。


ああ、彼女なら、本当に信じても良いのかもしれない、と思った。


彼女を、手放したくない、と。

 



「じゃあ夕鈴のお願い事も叶う様に、僕も手伝うからね!」


「ええ?!私は良いんです!それより陛下の--」


「・・・僕じゃ、助けにならない?」


「いいいいいえぇ!そんなことありません!是非、是非手伝ってくださいお願いします!」


「うん!僕頑張るよ!」


「はは、お願いします・・・。あ、勿論私も全力でお手伝いしますからね!さあ、張り切ってお願いしましょう!!」

 


夕鈴の言葉はいつだって黎翔の心を暖める。
ふわりと浮き立つ心のままに綻んだ口元を隠さず、朗らかに笑って夕鈴に告げれば途端に慌てだす様子が可愛くて仕方ない。頬を赤く染めたまま、改めて夜空を見上げる夕鈴の横顔を、黎翔は満面の笑みで見つめた。


 

「・・・その時は、よろしくね。」


「はい!頑張りましょうね!」

 


「うん、頑張ろーね!

 



 ・・・・・・・・・・絶対に、手離さないで居られるように、本気で、頑張らなきゃ、ね」



先ずは決意表明を兼ねて、星に願ってみようか。



「夕鈴の全てが、早く僕のものになりますように」、と。
 

 


















 

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